テレアポのROIの測り方|費用対効果の計算
「今月、テレアポでどれくらい利益が出たんですか?」——役員にそう聞かれて、答えに詰まった経験はないだろうか。アポ数なら即答できる。架電件数も出せる。でも「黒字なのか赤字なのか」と問われると、急に言葉が濁る。現場では珍しくない光景だ。
架電施策は、コストもリターンも見えにくい。人件費はリスト代やツール代に紛れ、成果は受注までのタイムラグで遅れてやってくる。だからこそ「なんとなく続けている」状態に陥りやすい。今回は、テレアポのROIを数字で測り、続けるべきか・やめるべきかを判断できる状態にする方法を見ていこう。
テレアポのROIを測るとはどういうことか
ROI(Return On Investment/投資対効果)は、ざっくり言えば「使った金に対していくら返ってきたか」だ。計算式そのものはシンプルで、
ROI = (獲得した粗利 − 投下コスト)÷ 投下コスト × 100(%)
これだけ。100万円かけて150万円の粗利を生んだなら、ROIは50%。元が取れているどころか、1.5倍になって返ってきている計算になる。
問題は「投下コスト」と「獲得した粗利」を、テレアポという施策に正しく割り当てられるかどうかだ。ここがあいまいだと、ROIはただの飾りの数字になる。逆にここさえ押さえれば、架電施策は「感覚で回すもの」から「数字で判断するもの」に変わる。
まず押さえたいのは、テレアポのROIは2つの方向から攻められるということ。ひとつはコスト側を積み上げてCPA(1アポ・1受注あたりの獲得単価)を出すやり方。もうひとつは受注単価から逆算して、いくらまでなら架電にかけてよいかを決めるやり方だ。両方をつなぐと、損益分岐点がくっきり見えてくる。
コスト側を測る:1コールの原価とCPA
最初にやるのは、投下コストの棚卸しだ。テレアポにかかっている費用を全部書き出してみると、意外と項目が多い。
- 人件費:架電担当者の給与・賞与・社会保険料。これが最大の費目になることがほとんど
- リスト代:購入リスト、スクレイピング、リスト精査の工数
- ツール代:CTI、SFA、クラウドPBXなどの月額
- 通話料:1コールあたりの従量課金
- 管理コスト:マネージャーの管理工数、研修費
例として、月給30万円(社会保険料込みで会社負担を約1.4倍と見て約42万円)の担当者が1人いるとする。1日100コール×20営業日で月2,000コール。ここにツール代2万円・リスト代3万円・通話料2万円を足すと、月の投下コストは約49万円。
これを使うと1コールの原価は約245円と出る。1日100コールなら、1日あたり約2.45万円が架電に溶けている計算だ。「たかが1本の電話」と思っていたコールに、これだけの原価が乗っている。この実感が、ROI改善の出発点になる。
次にCPAを出す。仮にこのチームのアポ獲得率が2%(2,000コールで40アポ)、アポから受注への転換率が25%(40アポで10受注)だとすると、
- アポ単価(CPA)= 49万円 ÷ 40アポ = 約1.2万円/アポ
- 受注単価(CPO)= 49万円 ÷ 10受注 = 約4.9万円/受注
ここまで出せば、もう「なんとなく」ではない。1件の受注を取るために約4.9万円を投じている、という事実が数字で立ち上がる。コスト構造をもっと細かく分解したい場合は、CTIとSFAのコスト比較も合わせて見ておくと、ツール側の固定費の妥当性が判断しやすくなる。
受注単価から逆算する:いくらまでかけてよいか
コスト側だけ見ても、それが高いか安いかは判断できない。比較対象になるのが、1件の受注がもたらす粗利だ。ここからROIの「攻め」の使い方が始まる。
仮に受注1件あたりの粗利が15万円だとする。さきほどのCPO(受注単価)は約4.9万円だった。すると、
ROI = (15万円 − 4.9万円)÷ 4.9万円 × 100 = 約206%
投じた額の3倍が返ってきている。この施策は続けるべきだ、と胸を張って言える。
逆算の発想はこうだ。粗利15万円の商材で、ROIをプラスに保つ損益分岐点は「CPOが15万円を超えない範囲」。さらに「最低でもROI100%(投資の2倍を回収)は欲しい」と決めるなら、CPOの上限は7.5万円。この7.5万円という天井を、アポ率・受注率・人件費に割り戻していくと、「1アポあたりいくらまでかけてよいか」「1コールの原価をどこまで抑えるべきか」が自動的に決まる。
サブスク型の商材なら、単月の粗利ではなくLTV(顧客生涯価値)で測るのが筋だ。月額1万円・平均継続24か月・粗利率70%なら、LTVベースの粗利は約16.8万円。単月で見れば赤字に見えた架電施策が、継続収益まで含めると十分にプラス、というケースは多い。ここを見誤ると、儲かっている施策を「コスト高」と勘違いして止めてしまう。
ROIが合わないとき、どこをいじるか
試算してROIがマイナス、あるいは薄すぎた——そのとき闇雲にコストを削ると、たいてい裏目に出る。担当者を減らせばコール数が落ち、ROIの分子(粗利)も一緒に縮む。見るべきは比率だ。
改善の打ち手は、おおむね4つのレバーに整理できる。
- アポ率を上げる:トークスクリプトの改善、リスト精度の向上。2%が3%になればCPAは1.5倍効率化する
- 受注率を上げる:質の高いアポに絞る。数を追って受注率5%のアポを量産するより、受注率30%のアポを丁寧に積む方が原価は下がる
- 1コール原価を下げる:架電の無駄打ちを減らす。不在・番号違いのリストを除外するだけで、有効コール比率が変わる
- 受注単価を上げる:アップセル、上位プランの提案。分母を変えずに分子を太らせる
このうち最も効くのは、たいてい2番目の「受注率」だ。アポの母数を増やすより、確度の高いアポを見極めて寄せる方が、ROIへの跳ね返りが大きい。そのためには、どのリスト・どの時間帯・どのトークから受注が生まれているかを記録して振り返る必要がある。指標の設計そのものに迷うなら、テレアポのKPI設計を先に固めておくと、ROI計算に使う数字がきれいに揃う。
ROIを測り続けるためにデータをそろえる
ROIの試算は、一度やって終わりではない。月次・施策単位で追い続けて初めて意味を持つ。ところが現場の壁は、たいてい「数字がそろわない」ことにある。
コール数はCTIに、アポ数はスプレッドシートに、受注は別の販売管理に——データがバラバラに散っていると、ROIを出すたびに転記と突き合わせで半日が消える。これでは「測るコスト」の方が高くついてしまい、結局また感覚運用に戻る。
だからこそ、架電・アポ・受注を一本の流れで記録できる状態を先に作っておきたい。誰が・どのリストに・何コールして・何アポ取れて・いくら受注したか。この一連が同じ場所に残っていれば、CPAもCPOもROIも、ボタンひとつに近い手間で出せるようになる。測るのが楽になれば、判断の回数が増え、改善のサイクルが速くなる。
まとめ
テレアポのROIは、特別な分析ツールがなくても測れる。やることはシンプルだ。
- 人件費・リスト代・ツール代・通話料を足して投下コストを出す
- アポ率・受注率で割ってCPA・CPOを計算する
- 受注単価(できればLTV)から逆算して、かけてよい上限を決める
- ROI =(粗利 − コスト)÷ コスト で、続ける・やめるを判断する
ここまで数字にできれば、「テレアポは利益が出ているのか」という問いに、感覚ではなく根拠で答えられる。そして測り続けるには、架電から受注までのデータが一本につながっていることが前提になる。まずは自分のチームの1コール原価を出してみるところから始めてみてほしい。
あわせて読みたい
- CTIの費用相場|月額・初期費用を徹底比較
- 中小企業向けSFA比較【2026年9月版】|月額費用・無料プラン・導入の進め方まで
- SFAの費用相場|月額・初期費用の構造と『安いSFA』で失敗しない予算の立て方
- SFA導入の費用対効果:ROI計算と判断基準
テレアポの管理をもっとシンプルに。 KIZUNA SalesFlowは、テレアポ/インサイドセールスチームのためのシンプルなSFAツールです。 詳しくはこちら →
Related
関連記事
SFA導入の費用対効果:ROI計算と判断基準
SFA導入のROI(費用対効果)を具体的な数字で計算する方法を解説。月額費用・導入コスト・人件費削減・アポ率向上の試算例から、投資回収の判断基準まで。コストだけで選ぶと失敗する理由と、小規模チームが見るべきポイントもまとめた。
CTIの費用相場|月額・初期費用を徹底比較
CTIの費用相場を初期費用・月額・通話料・オプションの4つに分解して解説。クラウド型とオンプレミス型の5年総額比較、席単価の価格帯別の機能差、見落としがちな通話料の試算例、5〜10席なら月3〜8万円の規模別目安、コストを下げる3つのコツを紹介します。
テレアポKPI設計|追うべき4つの数字と目標例
テレアポチームのKPI設計を解説。架電数・接続率・アポ率・有効商談率の4階層KPIの設定方法とチーム規模別の目標数値例。形骸化しない運用ルール付き。