SaaS商材のテレアポトーク設計|実例付き
「うちのサービス、電話だと伝わらないんですよね」
SaaS商材のテレアポ担当者からよく聞く悩みだ。形のない商品を、電話越しに30秒で伝えて興味を持ってもらう。確かにハードルは高い。だが、筆者はこれまで数百本のテレアポトークスクリプトを設計してきた中で、SaaS商材には「型」があることに気づいた。
この記事では、実際に架電現場で使われたHR系クラウドサービスのスクリプトを匿名化して公開し、SaaS商材特有のトーク設計術を解説する。
SaaS商材のテレアポが難しい3つの理由
まず、なぜSaaS商材のテレアポは難しいのかを整理しよう。
1. 目に見えない 有形商材なら「この機械を導入すれば生産性が上がります」と言える。SaaSは画面を見せないと伝わらない。電話では「画面を見せる機会をもらう」ことがゴールになる。
2. 競合が多い 「あー、〇〇みたいなやつね。もう使ってるよ」と言われがち。競合との違いを端的に説明できないと、その時点で会話が終わる。
3. 導入の緊急性が低い 「今すぐ必要」というケースが少ない。課題はあるが、既存のやり方(Excelや紙)でなんとか回っている。だからこそ、潜在的な課題を顕在化させるトークが必要になる。
この3つの壁を突破するために、実例をもとに具体的なトーク構成を見ていこう。
実例:HR系クラウドサービスのトークスクリプト
以下は、ある人事系SaaSサービスのテレアポで実際に使われていたスクリプトだ。商品名・社名は伏せているが、トークの構造はそのまま残している。
ステップ1:受付突破
「株式会社〇〇の△△と申します。
人事のご担当者様をお願いできますか?」
ポイント: 「人事」と部門名を指定するだけで受付突破率が変わる。「ご担当者様」だけだと「何の件ですか?」と聞かれやすい。部門名を言えるかどうかは、事前のリサーチ次第だ。受付突破の詳しいコツはこちら。
ステップ2:権威付け(最初の15秒)
「突然のお電話失礼します。株式会社〇〇の△△と申します。
弊社は人材育成・離職防止を支援するクラウドサービスを
提供しておりまして、現在3,000社以上にご導入いただいています。」
ここが重要だ。 普通のトークスクリプトでは、いきなり課題提起から入ることが多い。だがSaaS商材の場合、まず「信頼できる会社だ」と思ってもらう必要がある。
このスクリプトでは「3,000社以上の導入実績」を冒頭15秒以内に出している。これが権威付けだ。無形商材は信頼がなければ話すら聞いてもらえない。
権威付けに使える要素:
- 導入社数:「3,000社」「業界シェアNo.1」
- 有名企業の事例:「大手自動車メーカーや放送局にも導入」
- メディア掲載:「日経新聞にも取り上げられた」
- 受賞歴:「〇〇アワード受賞」
ただし、権威付けは1〜2要素に絞ること。詰め込みすぎると「自慢話」に聞こえる。
ステップ3:課題の投げかけ
「ところで、御社ではこの4月に入社される新入社員の方は
いらっしゃいますか?
——実は、新卒社員の約30%が3年以内に離職すると
言われていまして。4月以降、育成や定着に
お悩みが出てくる企業さんが非常に多いんです。」
これがSaaSテレアポの肝だ。 「人材育成ツールを紹介させてください」ではなく、相手が「うちもそうかも」と感じる具体的な課題を投げている。
このスクリプトが秀逸なのは3つの理由がある。
- 時事性:「この4月」と時期を限定することで、今まさに関係がある話題だと感じさせる
- 統計データ:「30%が3年以内に離職」という数字で客観性を持たせる
- 質問から入る:いきなりデータを出すのではなく、まず質問で「はい、います」と答えさせてから課題提起する
質問→Yes→課題提起の順番が大事だ。最初にYesを引き出すことで、心理的に会話が成立する。
ステップ4:解決策の提示とアポ取り
「弊社のサービスでは、社員一人ひとりの適性やコンディションを
可視化して、早期離職を防ぐ仕組みをご提供しています。
30分ほどお時間をいただければ、御社に合った活用イメージを
お伝えできるのですが、来週でご都合のいい日はありますか?」
ポイント: 機能の説明はしていない。「適性やコンディションを可視化」「早期離職を防ぐ」——相手の課題に対する解決の方向性だけを伝えている。
SaaS商材で失敗しがちなのが、電話で機能を説明しようとすること。「ダッシュボードがあって、データを分析できて、レポートが出せて…」と話せば話すほど、相手の頭の中はぼんやりしていく。
電話で伝えるのは**「何を解決するか」だけ**。「どうやって解決するか」はデモで見せる。だから30分の面談を取るのだ。
このスクリプトから学べる5つの設計原則
実例を分解して見えてきた、SaaS商材トークの設計原則をまとめよう。
原則1:権威付けは15秒以内に
無形商材は「怪しい」と思われやすい。冒頭で信頼を確保しないと、課題提起の段階まで到達できない。導入実績・有名事例・受賞歴のいずれかを、名乗りの直後に入れる。
原則2:質問→Yes→課題提起の3ステップ
いきなり「こんな課題ありませんか?」ではなく、まず簡単な質問で「はい」を引き出す。心理学で言う「一貫性の原理」が働き、そのあとの話も聞いてもらいやすくなる。
✕「新卒の離職でお困りではないですか?」
○「4月に新入社員の方はいらっしゃいますか?」→「はい」
→「実は新卒の30%が3年以内に離職すると言われていまして…」
原則3:統計データで「他人事」を「自分事」に
「3年以内に30%が離職」のような数字は、相手に「うちも例外ではないかも」と思わせる効果がある。自社サービスの機能ではなく、業界の課題データを武器にする。
使いやすい統計データの例:
- 「中途採用の平均コストは1人あたり約100万円と言われています」
- 「営業担当者の業務時間のうち、約65%は非売上活動に費やされています」
- 「テレワーク環境下で社員のエンゲージメントが低下したと回答した企業は約40%」
原則4:機能ではなく「解決する未来」を語る
✕「弊社のサービスは、社員データベース・評価管理・
スキルマップ・配置シミュレーションの4機能があります」
○「社員一人ひとりの適性やコンディションを可視化して、
早期離職を防ぐ仕組みです」
前者は機能の羅列。後者は解決される未来。電話では後者しか刺さらない。
原則5:時間を「30分」と明示してハードルを下げる
「一度お話しさせてください」は曖昧すぎる。「30分」「15分」と具体的な時間を提示することで、相手は「それくらいなら」と判断しやすくなる。クロージングの詳しいテクニックはこちら。
SaaS商材の業種別カスタマイズ例
ここまでの原則を使えば、商材が変わっても応用できる。業種別のカスタマイズ例を見てみよう。
例:営業支援SaaS(SFA)→ 営業部門向け
「現在、全国で○○社以上にご導入いただいている
営業支援ツールを提供しております。
御社でもテレアポでの新規開拓はされていますか?」
→「はい」
「最近、架電リストの管理をExcelでやっている企業さんで、
重複架電や進捗の見える化に課題を感じるケースが
増えていまして——」
例:経費精算SaaS → 経理部門向け
「現在、○○社以上にご導入いただいている
経費精算クラウドを提供しております。
御社では月末の経費精算、紙の申請書を
お使いですか?」
→「はい」
「実は、紙の経費精算にかかる1件あたりの処理コストが
約500円と言われていまして。月100件で年間60万円——
この部分を大幅に削減できる方法がありまして。」
例:採用管理SaaS → 採用担当向け
「現在、○○社以上にご利用いただいている
採用管理システムを提供しております。
御社では今期、中途採用の計画はございますか?」
→「はい」
「中途採用の平均コストが1人あたり約100万円と
言われている中で、応募者管理や面接調整の工数を
半分にできたら、採用単価にも大きく影響しまして——」
どの例でも、権威付け→質問→Yes→統計データ→課題提起の流れは同じだ。この「型」を押さえておけば、新しい商材でもスクリプトをゼロから考える必要がない。
よくある失敗パターン
SaaS商材のテレアポで特にやりがちな失敗を3つ挙げておく。
失敗1:機能説明が長い
「弊社のサービスはですね、まずダッシュボード機能がありまして、そこでリアルタイムにデータが見えるんですが、さらにレポート機能で月次のサマリーも出せて、API連携もできるので既存のシステムとも——」
相手はとっくに聞いていない。電話で伝えるのは「何を解決するか」の一言だけ。あとはデモで見せる。
失敗2:競合との違いを聞かれて焦る
「〇〇と何が違うの?」と聞かれたとき、機能比較を始めてしまうのはNG。電話で比較表を読み上げても伝わらない。
切り返し例:
「よくご存知ですね。実は〇〇さんからの乗り換えも多くて、一番の違いは△△なんですが、画面を見ていただくのが一番わかりやすいです。15分だけお時間いただけますか?」
断られたときの切り返しトーク集も参考にしてほしい。
失敗3:「無料トライアル」を電話で提案する
「無料で試せます!」は一見ハードルが低そうだが、テレアポの段階では逆効果なことが多い。相手は「試す時間がない」「よくわからないものを入れたくない」と感じる。まずは30分のデモ面談で価値を理解してもらうことが先だ。
スクリプトを磨き続ける仕組み
最後に、スクリプトを一度作って終わりにしない仕組みづくりについて触れておく。
1. 週次で「断り文句ランキング」を出す 架電結果を記録して、「どの段階で」「何と言って断られたか」を集計する。権威付けの段階で切られるなら信頼構築が弱い。課題提起で切られるなら刺さるポイントがズレている。
2. A/Bテストを回す 導入トークを2パターン用意して、50件ずつ試す。「導入実績を先に言う」vs「課題を先に言う」、「数字を入れる」vs「入れない」——小さな違いでアポ率は変わる。
3. トップアポインターの架電を録音して共有する 数字が出ているメンバーのトークには、必ず「なぜ取れるか」の理由がある。録音を聞いてスクリプトに反映する。トークスクリプトの改善方法も参考に。
まとめ
SaaS商材のテレアポは、5つの設計原則を押さえれば「型」が作れる。
- 権威付けは15秒以内:導入社数・有名事例で信頼確保
- 質問→Yes→課題提起:まず「はい」を引き出してから本題へ
- 統計データで自分事化:業界の数字で「うちもかも」と思わせる
- 機能ではなく解決する未来:「何ができるか」ではなく「何が変わるか」
- 時間を明示:「30分だけ」でハードルを下げる
電話の目的は売ることではなく、デモの30分をもらうこと。この一点に集中してスクリプトを設計すれば、SaaS商材のテレアポは確実に成果が出る。
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