インフルエンサーマーケティングのテレアポ——データ訴求で差別化する提案術

インフルエンサーマーケティングの営業は、テレアポとの相性が悪いと思われがちだ。「SNSの案件なのに電話?」という違和感もあるし、そもそもインフルエンサー施策を検討している企業のマーケ担当は、営業電話をまともに取り合わないことが多い。

ただ、あるトークスクリプトを分析してみたところ、ECプラットフォームの購買ビッグデータという切り口を武器にすることで、通常のインフルエンサー代理店とは全く違うポジションでアポが取れるパターンがあった。今回はその手法を分解してみる。

「某大手ECモール運営です」——プラットフォーム権威で受付を突破する

このスクリプトの最大の特徴は、ECモール運営企業の看板を使って電話をかける点にある。

「某大手ECモール運営の〇〇と申します。」

受付が聞いたとき、これは「営業電話」ではなく「取引先からの連絡」に聞こえる。実際に出店しているショップや、カードを利用している企業なら、なおさらだ。受付が「あ、ECモールの方ですか」と反応した時点で、突破はほぼ成功している。

通常のインフルエンサー代理店が「SNSマーケティングのご提案で……」と切り出したら、その瞬間に「間に合ってます」で終わる。プラットフォーム運営企業という肩書きの差が、受付突破率を大きく変える。

テレアポにおいて「誰として電話するか」は、「何を話すか」より重要なことがある。自社にプラットフォーム運営やメディア運営の側面があるなら、そちらの看板で架電したほうが突破率は確実に上がる。

「当社のサービスをお使いいただいたことは?」——個人接点で距離を詰める

受付を突破して担当者に繋がったら、次のフックが「個人的な接点づくり」だ。

「ちなみに、〇〇様は個人的に当社のECモールやカードをお使いになったことはありますか?」

これはビジネスの話をする前に、相手を「担当者」ではなく「一人の消費者」として扱うテクニックだ。大手ECモールなら大抵の人が使ったことがあるので、「ありますよ」と返ってくる確率が高い。

「ありますよ」と言った瞬間、相手の心理的なポジションが変わる。「営業電話を受けている担当者」から「サービスを利用しているユーザー」にシフトする。この状態で本題に入ると、「まあ話くらい聞いてみるか」という空気が生まれやすい。

テレアポの現場では、最初の30秒で相手との心理的距離をどれだけ縮められるかが勝負だ。BtoBの営業電話で「個人としての接点」を作れるケースはそう多くないので、これが使える商材ならぜひ取り入れたい。

「4,000万人以上の購買ビッグデータ」——差別化の核心

インフルエンサーマーケティングの代理店は山ほどある。フォロワー数や再生数でキャスティングする会社、特定ジャンルに強い会社、安さで勝負する会社——差別化が難しい市場だ。

このスクリプトでは、ECモールの購買データを差別化の軸に据えている。

「4,000万人以上の会員様の購買ビッグデータを使って、SNSプロモーションやインフルエンサーのキャスティングを行っているんですね。」

ポイントは「4,000万人」という具体的な数字だ。テレアポで数字を出すときは、相手が直感的に「すごい」と感じるスケールでないと意味がない。「数百社の実績」ではなく「4,000万人の購買データ」——この桁の違いが、担当者の耳を引く。

通常のインフルエンサー代理店は「フォロワー数」や「エンゲージメント率」で語る。しかし、広告主が本当に知りたいのは**「このインフルエンサーに頼んで、実際にモノが売れるのか?」**だ。購買データに基づくキャスティングは、この疑問にダイレクトに答えられる。

「成果が見えづらい」——業界共通の痛みに刺す

インフルエンサーマーケティングの最大の課題は、効果測定の難しさだ。これはマーケ担当者なら誰もが感じている痛みであり、テレアポで刺すには最適なポイントになる。

「インフルエンサーマーケティングって、成果や効果がなかなか見えづらいと言われる部分もあると思うんですけど、購買データを使うことで実際に売上にどう繋がったかまで追えるんですね。」

このトークの構造を分解すると——

  1. 業界共通の課題を言語化する(「成果効果が見えづらい」)
  2. 相手に同意させる(「と言われる部分もあると思うんですけど」)
  3. 自社の解決策を提示する(「購買データで売上まで追える」)

テレアポでは、いきなり自社サービスの説明に入るより、相手の課題を先に言語化するほうが圧倒的に効く。「そうそう、まさにそれが困ってたんだよ」と思わせたら勝ちだ。

インフルエンサー施策にかける予算は1案件あたり50万〜300万円が相場だが、「で、結局売れたの?」に答えられない代理店がほとんど。この痛みに刺せるかどうかで、アポ率は体感で1.5〜2倍変わる。

ECモール運営からマーケティングサービスへのピボット

このスクリプトのうまいところは、「ECモール運営です」で入って、途中から「マーケティング支援もやってます」にピボットする流れだ。

最初からインフルエンサーマーケティングの営業です、と名乗ったら受付で弾かれる。ECモール運営企業として入ることで、まず信頼の土台を作る。その上で「実はこういうサービスもやっていまして」と展開する。

この「入口と本題をずらす」テクニックは、他の業界でも応用できる。たとえば——

  • 通信キャリアの法人営業が、回線の話から入ってDXコンサルに展開する
  • クレジットカード会社が、カード利用状況の確認から入ってマーケティングデータの販売に展開する
  • メディア運営企業が、取材依頼の体で入ってから広告枠の提案に展開する

いずれも「本業の看板で入って、付帯サービスに展開する」構造は同じだ。自社にこのパターンが使えないか、商材の棚卸しをしてみる価値はある。

広告予算ヒアリングで案件の温度感を測る

アポ打診の前に必ず入れたいのが、現在の広告出稿状況のヒアリングだ。

「現在、リスティング広告やSNS広告などはご利用されていますか?」

この質問で3つの情報が同時に取れる。

  1. 広告予算の有無——広告を出している企業か、出していない企業か
  2. デジタルリテラシー——SNS広告をやっているなら、インフルエンサー施策への理解もある程度期待できる
  3. 競合状況——既に代理店を使っているのか、自社運用なのか

「月にどのくらいの予算をかけていますか?」と踏み込めるとさらに良い。広告予算が月100万円以上ある企業なら、インフルエンサー施策の提案が刺さりやすい。逆に広告予算がゼロの企業は、そもそもマーケティング投資のフェーズにない可能性が高く、アポを取っても空振りになりがちだ。

テレアポで成果を出すチームは、アポの質を見極める目を持っている。「とりあえずアポを取る」ではなく、「この企業は商談に進む可能性があるか」を架電中に判断する。広告予算のヒアリングは、その判断材料として非常に有効だ。

まとめ:データという武器があるなら、テレアポの勝ち筋は変わる

インフルエンサーマーケティングのテレアポで差別化するポイントを整理すると——

  • プラットフォーム権威で受付突破:「ECモール運営の〇〇です」で営業電話感を消す
  • 個人接点で距離を詰める:「当社のサービス使ったことありますか?」で心理的距離を縮める
  • 購買データで差別化:「4,000万人の購買ビッグデータ」で他の代理店と一線を画す
  • 効果測定の課題に刺す:「成果が見えづらい」という業界共通の痛みを言語化する
  • 入口と本題をずらす:ECモール運営として入り、マーケ支援にピボットする
  • 広告予算で温度感を判断:リスティングやSNS広告の利用状況で案件の質を見極める

どのテクニックも、特定の商材に限った話ではない。「自社のアセットを棚卸しして、最も強い看板で電話する」「相手の課題を先に言語化する」「数字で差別化する」——この原則は、あらゆるテレアポに応用できる。

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